アドバンド株式会社

アフターコロナの突破口を想像できるか?【経済】

21.01.23
アフターコロナの突破口を想像できるか?【経済】

人々の生活を大きく変えた新型コロナウイルス感染症は、会社の業績にも甚大な影響を及ぼしました。
例えば、今期最終損益が過去最大の5100億円の赤字との見通しを発表した、航空大手のANAホールディングス。鉄道大手のJR東海も同じく、1920億円の赤字見通しとの報道がなされました。さらに、旅行会社最大手のJTBは、経常利益が過去最大となる1000億円となる見通しを公表するとともに、早期退職の拡充などで国内外の20%に相当する6500人を削減する方針を明らかに。また、正社員200人の希望退職を募集するロイヤルHD、2021年末までに不採算店舗を中心に200店を閉店すると発表したすかいらーくホールディングスなど、外食産業への打撃も深刻です。
一方、コロナによる企業への影響は、飲食や観光など一部の産業だけではありません。ある調査によれば、企業全体の8割に何らかのマイナスの影響が出ているといいます。インバウンド関連では航空会社だけでなく、ホテルや百貨店を運営する企業もダメージを受けました。さらに、外出自粛や都市封鎖により、主要市場での販売機会を失った自動車業界。ここでは、仕入先の鉄鋼・素材メーカーにも影響が及んでいます。そして、もともとの高コスト体質に加えて2019年の消費税増税の開始、ここにコロナ禍が直撃したアパレル業界。老舗レナウンの倒産や、セシルマクビーの全店閉鎖は、長くブランドを支えてきた消費者に衝撃を与えました。ほかにも、これまで稼ぎ頭だったモールなどの商業施設を開発・運営する不動産業界。外出・移動の自粛により、通勤・通学客の減少で業績が悪化した鉄道業界。もちろん、人の移動が制限されたことによるサプライチェーンの寸断により、日本が強みを誇る各種メーカーも厳しい経営を強いられています。

従業員の働き方が大きく変化


会社で働く従業員はどう変わったのでしょうか。①働き方 ②人事評価 ③採用力という3つの視点で考えてみましょう。
1点目に、従業員の働き方は、感染拡大防止を目的として、リモートワークを導入する企業が急増しました。日常生活と仕事の最適化を図るワークライフバランスも浸透。ウェブ商談やウェブ会議を含めITツールなしでは業務が滞ってしまうため、大企業だけでなく中堅・中小企業にもDXのすそ野が広がりました。「本当に在宅で仕事ができるのだろうか?」という経営者の心配をよそに、これまで遅々として進まなかった「働き方改革」が、コロナ禍で一気に加速したのです。
この動きは、都心のオフィス需要にも大きな変化を与えました。リモートワークの浸透により、オフィスに広さや快適さを求める必要がなくなったからです。狭くとも賃料の負担が小さく、社会情勢の変化に対応できるオフィスへの移転を検討する企業も増えました。
人気のリモートワークですが、利用者へのアンケート調査によると、全員一致で賛成ではないようです。「家族や趣味の時間が確保できる」「通勤がないので十分な睡眠時間が取れる」という賛成派の意見が目立つ一方、「在宅では集中力が続かない」「コミュニケーションが不十分で、品質が低下する」といった反対派の意見も少なくありません。今後は在宅と出社のハイブリッドな勤務形態が主流となるでしょう。
2点目は、人事評価の変化です。リモートワークはごまかしが利きません。本当に必要な人材にしかウェブ会議への声がかからないし、社歴が長いだけで中身のない発言しかできない上司は淘汰されていきます。また、コロナ禍を契機として成果主義を推進したい企業は、人に仕事をつけるメンバーシップ型から、仕事に人をつけるジョブ型の雇用へとシフトしています。ますます待遇の二極化が進むことでしょう。こうなると、雇用形態そのものも変わるかも知れません。従来どおりオフィスでバリバリ働く社員がいる一方、育児や介護を含め家族と過ごす時間を重視し、リモートワークで自分らしい生活スタイルを確立する社員もいる。あるいは個人事業主として契約、他社の仕事も請け負う「複業」など、自ら考えて行動することで、正当な評価や理想的なキャリアパスを獲得するケースも増えるはずです。
3点目に採用力の変化についてです。人口が減少する日本において、優秀な人材を採用できるかどうかは、企業の成長を著しく左右します。この採用力のポイントは、給与など待遇と同時に、フレキシブルな働き方ができる環境にあります。すでに女性社員のライフイベントを支援する企業は多いですが、今後は女性とか出産・育児に限定するのではなく、社員が生産性を高めて活躍・成長でき、オンとオフのバランスをとりながら、自分らしい生き方を描くことができる会社の人気が高まることでしょう。会社のニューノーマル(新常態)は、すでに確立されつつあります。


7割経済で生き抜く時代


巣ごもり消費により、業績を伸ばした企業もあります。例えば、発売から3日で188万本の大ヒットとなるゲーム「あつまれどうぶつの森」をつくった任天堂です。発売から数週間後に緊急事態宣言が発令され、ゲーム機本体の売上も大きく伸びました。自転車部品を製造するシマノも業績が好調です。世界的な健康ブームに加え、コロナ禍で電車やバスではなく自転車で通勤・通学したいニーズが急増。株価は一時、上場以来の最高値をつけました。

ただし、これらの“勝ち組”企業は決して多くはなく、ウィズコロナでは「7割経済」でも成り立つビジネスモデルを構築する必要があると言われています。今後も外出自粛や将来への不安から、消費を控える傾向が予測されるからです。実際には少しずつ回復し、8割とか9割の経済になるのかも知れませんが、経済規模の縮小は避けられません。チャンスがあるなら、競合が委縮するのを横目に、DXを推進してこれまで接点のなかった顧客を獲得することです。
このテーマについては次回以降の記事でお伝えします。



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