アドバンド株式会社

インナーブランディングのための秘密兵器「理念ブック」とは!?【前編】

19.06.20
インナーブランディングのための秘密兵器「理念ブック」とは!?【前編】

社内のベクトルを統一するためには?

大企業、中小企業に関わらず、「社内の意思統一を図れていない」という問題を抱える会社は多い。
原因として、大企業の場合は、セクショナリズムが横行し社内の意思決定に時間がかかる「大企業病」にかかっていることや、M&Aなどにより文化の異なる会社が1つになり環境が変化したこと。中小企業の場合、事業の拡大につれて管理職の目が社員に届かなくなったことなどが挙げられる。その解決策として、インナーブランディングという手法がある。社内のベクトルを一致させることで、誰もが会社の「顔」として行動できるようにする取り組みであり、働き方改革が推進されている今、内側からの見直しの手段として大いに注目されている。


お手軽サイズな会社の解説書「理念ブック」

インナーブランディングを行う上で有効なツールが、「理念ブック」である。理念ブックとは会社の理念、ビジョン、経営目標、事業戦略などを記した、「会社の解説書」のようなものだ。社内に張り出してあまり注目されないポスターや、一度読んだらそれ後は目を通すことのない難解な事業計画などとちがい、親しみやすいデザインと簡潔な言葉で構成されていて、なおかつ文庫本ほどの大きさなので手軽に持ち運べ、いつでも読むことができる。行動規範を定めてカードにする「クレド」の拡大版というと、わかりやすいかもしれない。


ユナイテッドアローズ成長の裏側

アパレルブランド「UNITED ARROWS」を運営する、株式会社ユナイテッドアローズも理念ブックを採用している。
同社が業績低迷に陥った際、原因は内部にあると分析。業績回復および安定的な成長のためには、「店はお客様のためにある」という基本方針や、「世界に通用する新しい日本の生活文化の規範となる価値観の創造」という経営理念を、全社員に共有することが必要であると考え、理念ブックを配布した。現在までに2回改訂されており、最新のものは、経営理念体系などを記載したVISION」、社員の声を集めたVOICE」、社員から募った写真を集めた冊子「VISUAL」の3冊で成り立っている。特に「VOICE」では、3000人の社員にアンケートをとり、リアルな声を掲載している。質問の中には、働く喜びや、お客様に言われて嬉しかったことなどのポジティブなものだけでなく、働く上での悩みというネガティブなものも存在する。これには、他の社員が同様の境遇に直面した際、解決策を見出すための参考となればよいという意図がある。
理念ブックを活用したインナーブランディングの結果、顧客目線の接客が徹底され、2012年には東京証券取引所が創立した企業価値向上表彰で大賞を受賞した。


ところで、すべての会社のインナーブランディングが成功するわけではない。一大プロジェクトとして取り組んだが、あまり効果が出ていないという会社も多くある。
【後編】では、理念ブックの具体的な作成フローや、効果の出る活用法について述べていく。

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