株主通信社会環境報告書IR/CSR 統合報告書はじめの一歩vol.04 統合報告書って印刷したほうがいい? 冊子にするメリット・デメリットを紹介! 22.03.22 統合報告書は、冊子の形で印刷して発行するのが一般的だと思っていませんか?実は、WebサイトにPDFデータを掲載するのみで、実際の冊子としては印刷しない企業も増えてきています。なぜ、Webサイトへの掲載のみにとどめているのでしょうか? その理由を2つご紹介します。Webで完結する統合報告書が増えている理由①オンライン主流のやり取りが活発化新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響で、リモートワークのための環境整備が急速に進みました。それに伴い、従来は会場を借りて開催していた説明会や、対面で行っていた投資家面談も、続々とオンラインに移行しています。オンラインならば、アナログの冊子よりもデータのほうが受け渡しがしやすいため、PDFのほうが都合がよいのです。また、投資家のみならずあらゆる人が、初期段階の情報収集をWeb上で行う時代。統合報告書は取引先や自社の社員、就活生、地域の方など、あらゆるステークホルダーに有効な資料です。Webサイト上に掲載しておけば多くの人に見てもらえるため、アクセスされることが多いネームバリューのある企業にとっては、冊子版は必要ないと言えるでしょう。②ペーパーレスへの対応SDGsやESGを考慮するうえで、会社全体でペーパーレスを意識する企業が増加しています。その方針に基づき、IRツールも印刷せず、Webサイトにのみ掲載。投資家に対してはリンクのみをお知らせしてアクセスしてもらうのです。たしかに、報告書内で環境負荷軽減の取り組みを述べているにも関わらず、その冊子自体を大量に印刷すれば、矛盾していると思われてしまう可能性もあります。社内で一貫した姿勢を見せるうえで、「印刷しない」というのも戦略のうちといえます。トレンドの形式、「インタラクティブPDF」Webサイトに統合報告書を掲載するうえで多いのが、「インタラクティブPDF」形式です。インタラクティブPDFとは、ユーザー側が操作できるように設定されたPDFデータのこと。特定部分をクリックすると任意のページにジャンプできたり、外部サイトへのリンクを貼れたりする、提供者にもユーザーにも便利な形式なのです。時に100ページ以上にもなることがある統合報告書。1枚ずつスクロールしていくのは大変です。目次から各パートへのリンクを貼っておけば、ユーザーは見たい部分を選んでクリックし、すぐに読むことができます。また、動画を再生できたり、別のPDFを開いたりできるので、詳細な情報へ誘導することも可能。新しい情報を入手でき、ユーザーの満足度を高めることができるのです。A4横のサイズでデータを制作すれば、パソコン上で見たときにも最低限の縮小・拡大で済み、ストレスなく見ることができます。PULL型メディアとPUSH型メディアを使い分けよう!ここまで、Webサイトに統合報告書を掲載する理由と、トレンドの形式を見てきました。しかし、Webサイトだけで完結してしまうと、本来読んでもらうべき層に情報が届かない場合があります。なぜならば、それが「PULL型メディア」だからです。そもそもメディアには、「PUSH型」と呼ばれるものと、「PULL型」と呼ばれるものがあります。PUSH型とは、提供側からユーザー側へ情報を渡すタイプのメディア。マスメディアや印刷物がこれにあたり、能動的に接点を増やすことができます。また、実物があるため実際に手に取って眺めることができ、価値を感じやすいというのもポイントです。ただし、PULL型よりもコストがかかります。PULL型は、ユーザー側から提供側へ情報を取りにいくタイプのメディア。Webサイトや動画はこのタイプになります。興味を持ったユーザーが訪問して情報を受け取るため、読まれやすいというメリットがある一方、ユーザーが行動しない限り情報を伝えることができません。機関投資家やアナリストのようなプロならともかく、普段の生活をしながら複数の上場企業に投資する個人投資家は、特定の企業のIRサイトに何度もアクセスすることはあまりないでしょう。PULL型とPUSH型、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、統合報告書をWebサイト上にのみ掲載するのか、印刷物としても発行するのか、社内で十分に議論することが大切です。認知度が高い企業であれば、Webサイトのみでも自然と読んでもらえるかもしれません。機関投資家などに郵送してアピールが必要な場合は、冊子として印刷するのも戦略として大いに有効でしょう。ただし、印刷するにしても環境への配慮は意識すべきです。例えば紙ならFSC認証紙、インキならUVエコインキなどを使用すれば、負荷を減らすことができます。いかがでしょうか?統合報告書を印刷するかどうかには、会社全体の環境に対するスタンスや統合報告書の目的、ターゲット等、さまざまな要因が関わってきます。Webサイトに掲載するのみでいい、と一概には言えないのが難しいところ。多くの人に読んでもらうためには、戦略的に検討することが大切です。4回にわたってお届けしてきた「統合報告書はじめの一歩」。支援会社の選び方や社内のチーム作りなどで役立つコツをお伝えしてきました。このシリーズで得たヒントをもとに、すてきな統合報告書を完成させてくださいね!▼『統合報告書はじめの一歩』過去の記事はこちらvol.01 支援会社の選び方vol.02 コンペの開き方vol.03 社内のチームづくり 関連記事 印刷物ができるまでを追いかけたら、意外とたくさんの人が関わっていた BtoB企業の広報リニューアルで発注先を選ぶ3つのポイントとは 打ち合わせ時間が短くなる!?Web会議のメリット・デメリットを徹底解... 統合報告書はじめの一歩vol.01 共に歩むパートナーを決めよう!支...
統合報告書は、冊子の形で印刷して発行するのが一般的だと思っていませんか?
実は、WebサイトにPDFデータを掲載するのみで、実際の冊子としては印刷しない企業も増えてきています。
なぜ、Webサイトへの掲載のみにとどめているのでしょうか?
その理由を2つご紹介します。
Webで完結する統合報告書が増えている理由
①オンライン主流のやり取りが活発化
新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響で、リモートワークのための環境整備が急速に進みました。それに伴い、従来は会場を借りて開催していた説明会や、対面で行っていた投資家面談も、続々とオンラインに移行しています。オンラインならば、アナログの冊子よりもデータのほうが受け渡しがしやすいため、PDFのほうが都合がよいのです。
また、投資家のみならずあらゆる人が、初期段階の情報収集をWeb上で行う時代。統合報告書は取引先や自社の社員、就活生、地域の方など、あらゆるステークホルダーに有効な資料です。Webサイト上に掲載しておけば多くの人に見てもらえるため、アクセスされることが多いネームバリューのある企業にとっては、冊子版は必要ないと言えるでしょう。
②ペーパーレスへの対応
SDGsやESGを考慮するうえで、会社全体でペーパーレスを意識する企業が増加しています。その方針に基づき、IRツールも印刷せず、Webサイトにのみ掲載。投資家に対してはリンクのみをお知らせしてアクセスしてもらうのです。
たしかに、報告書内で環境負荷軽減の取り組みを述べているにも関わらず、その冊子自体を大量に印刷すれば、矛盾していると思われてしまう可能性もあります。社内で一貫した姿勢を見せるうえで、「印刷しない」というのも戦略のうちといえます。
トレンドの形式、「インタラクティブPDF」
Webサイトに統合報告書を掲載するうえで多いのが、「インタラクティブPDF」形式です。インタラクティブPDFとは、ユーザー側が操作できるように設定されたPDFデータのこと。特定部分をクリックすると任意のページにジャンプできたり、外部サイトへのリンクを貼れたりする、提供者にもユーザーにも便利な形式なのです。
時に100ページ以上にもなることがある統合報告書。1枚ずつスクロールしていくのは大変です。目次から各パートへのリンクを貼っておけば、ユーザーは見たい部分を選んでクリックし、すぐに読むことができます。また、動画を再生できたり、別のPDFを開いたりできるので、詳細な情報へ誘導することも可能。新しい情報を入手でき、ユーザーの満足度を高めることができるのです。
A4横のサイズでデータを制作すれば、パソコン上で見たときにも最低限の縮小・拡大で済み、ストレスなく見ることができます。
PULL型メディアとPUSH型メディアを使い分けよう!
ここまで、Webサイトに統合報告書を掲載する理由と、トレンドの形式を見てきました。しかし、Webサイトだけで完結してしまうと、本来読んでもらうべき層に情報が届かない場合があります。なぜならば、それが「PULL型メディア」だからです。
そもそもメディアには、「PUSH型」と呼ばれるものと、「PULL型」と呼ばれるものがあります。
PUSH型とは、提供側からユーザー側へ情報を渡すタイプのメディア。マスメディアや印刷物がこれにあたり、能動的に接点を増やすことができます。また、実物があるため実際に手に取って眺めることができ、価値を感じやすいというのもポイントです。ただし、PULL型よりもコストがかかります。
PULL型は、ユーザー側から提供側へ情報を取りにいくタイプのメディア。Webサイトや動画はこのタイプになります。興味を持ったユーザーが訪問して情報を受け取るため、読まれやすいというメリットがある一方、ユーザーが行動しない限り情報を伝えることができません。機関投資家やアナリストのようなプロならともかく、普段の生活をしながら複数の上場企業に投資する個人投資家は、特定の企業のIRサイトに何度もアクセスすることはあまりないでしょう。
PULL型とPUSH型、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、統合報告書をWebサイト上にのみ掲載するのか、印刷物としても発行するのか、社内で十分に議論することが大切です。
認知度が高い企業であれば、Webサイトのみでも自然と読んでもらえるかもしれません。機関投資家などに郵送してアピールが必要な場合は、冊子として印刷するのも戦略として大いに有効でしょう。ただし、印刷するにしても環境への配慮は意識すべきです。例えば紙ならFSC認証紙、インキならUVエコインキなどを使用すれば、負荷を減らすことができます。
いかがでしょうか?
統合報告書を印刷するかどうかには、会社全体の環境に対するスタンスや統合報告書の目的、ターゲット等、さまざまな要因が関わってきます。
Webサイトに掲載するのみでいい、と一概には言えないのが難しいところ。
多くの人に読んでもらうためには、戦略的に検討することが大切です。
4回にわたってお届けしてきた「統合報告書はじめの一歩」。
支援会社の選び方や社内のチーム作りなどで役立つコツをお伝えしてきました。
このシリーズで得たヒントをもとに、すてきな統合報告書を完成させてくださいね!
▼『統合報告書はじめの一歩』過去の記事はこちら
vol.01 支援会社の選び方
vol.02 コンペの開き方
vol.03 社内のチームづくり