販売促進企業経営 アフターコロナの突破口を想像できるか?【営業スタイル】 21.01.24 企業活動において、コロナ感染の前後で最も大きな影響を受けたのは「営業」部門です。例えばB2B企業では、新規のお客様との接点を生み出すため、さまざまな活動を行っています。アウトバウンドセールスの代表格である「テレアポ」や「訪問」、一度に多くのリストが得られる「展示会」や「セミナー」など、コロナ前までは、リアルな場での面会を前提とした方法が主流でした。ところが、コロナ感染が拡大すると、状況は一変。リモートワークが広がったため、ターゲットとなる会社に電話しても担当者につながらない。密を避けるため、展示会やセミナーの開催は見送られる。つまり、これまでの方法では、潜在顧客ニーズの収集が難しくなったのです。これを機に、急激に需要が高まったのが、「ズーム」や「ウェブエックス」、「チームズ」などのウェブ会議システムです。複雑な機能を求めなければ無料で利用することができ、相手のPCにソフトをインストールする必要もないため、利用者数は一気に拡大しました。ウェブ商談、ウェブセミナー(ウェビナー)、さらに最近は、動画を使って商品やサービスを解説するウェブ展示会まで登場しています。営業活動において、ウェブ商談が主流になったことは、企業にとっても大きなメリットがありました。1点目は生産性の向上、2点目は売上機会の拡大です。まず、生産性の向上ですが、これまでの商談では客先への移動時間が避けられなかったため、営業が1日に接点を持てる顧客数は限られていました。まして、遠方や海外への出張ともなると移動時間だけでなく、交通費や宿泊費など経済的な負担も小さくありません。ところがウェブ会議システムを使えば、移動時間を考慮する必要がないため、1日に従来の2~4倍ほどの顧客との商談も可能になります。対面よりもウェブ商談のほうが、無駄話もなく短時間で済むため、時間効率も最大化できます。会社にとってフィールドセールスのコストは非常に大きく、最小の人員で多くの顧客を回ることができれば固定費は大幅に削減できるでしょう。もう一つは、売上機会を拡大できること。これまでは限られた商圏でしかビジネスができなかった業態でも、製品やサービスの質さえ良ければ、売り先を広げることが可能となります。特にリソースの少ない中小・中堅企業にとって、支社や営業所を拡大して人材を新たに雇用するリスクを負うことなく、一気に商圏を拡大できるのは大きな魅力のはずです。ウェブ商談における課題もメリットが大きいウェブ商談だが、実は課題もあります。ここでは2点挙げておきます。一つは、これまで以上に、プレゼンテーションの質が問われることです。対面でもオンラインでも、コミュニケーションや関係性の構築にちがいはありませんが、「素敵なオフィスですね」「最近はめっきり寒くなりましたな」など、オンラインでは他愛もない会話は望まれない傾向があります。そのため、対面では1時間の商談が、オンラインでは30~40分と密度の濃い時間になります。これまでのような、営業マンの人柄や実直さだけでは成約しにくくなった分、ロジカルかつ説得力のあるプレゼンテーションが求められるようになりました。書類や資料を見せながらの説明はできないため、事前にPCやブラウザにデータを表示するなど、万全の準備が必要です。もう一つは、ウェブ商談では画面しか映らないため、視覚に訴える努力や工夫が必要なこと。「表現力」や「演技力」といってもいいでしょう。身振りや手振り、うなずき、笑顔、発声など、少々大袈裟なリアクションをするくらいでちょうど良く、対面のときと同様、服装や髪型に気を遣うのはもちろんです。また、外部の音を遮るための単一指向性マイクや、逆光や暗い部屋での見映えを向上するリングライトやウェブカメラなども準備したいところ。自宅で仕事をする際は、相手が商談に集中できるよう、バーチャル背景にも配慮しましょう。意外に盲点なのが、PCの角度や画面との距離。やたら顔が大きく見えたり、上から目線で話されたりすると、不快に感じるお客様も少なくなくありません。「第一印象を制する者が、ビジネスを制する」と断言する営業のプロもいるが、あながち間違ってはいないのかもしれません。広く浸透するインバウンドセールスさて、ウェブ商談について長々とお伝えしましたが、そもそもお客様が見つからなければ商談には進めません。つまり、これまでと同様、営業における最大の課題は新規顧客の開拓です。コロナ感染の拡大により、テレアポ、展示会、セミナーが機能しなくなったことが影響し、B2B企業ではデジタルを中心としたインバウンドセールスへのシフトが急速に進んでいます。インバウンドセールスとは、営業の側から顧客に声をかけて販売するのではなく、有益な情報を発信することで顧客を惹きつけ、その購買活動を支援することで自社の製品・サービスを購入してもらう手法を指します。簡単にいうと、ウェブサイト上で情報を発信して新規顧客との接点を生み出し、ウェブ商談につなげ、商品を買ってもらうのです。株式会社ベーシックが運営するオウンドメディア「フェレット」の、B2B企業担当者向けアンケート調査によると、コロナ禍に感じたユーザーの変化として半数近くが「オンラインでの情報収集が増えた」と回答。さらに3割以上が「ウェビナーでの情報収集が増えた」と感じているそうです。一方で、半数以上が「オンラインマーケティングに対する社内のノウハウのなさ」を懸念しています。加えて、B2Cに比べてB2Bのほうが、ウェブサイトによる売上貢献度が高いと指摘する専門家も多く、ますますインターネットを活用したインバウンドセールスに注力する企業が増えることでしょう。このように見てくると、広義の営業活動において、企業にとっての課題は「川下」のウェブ商談を活用するセールスではなく、「川上」で潜在顧客との接点を生み出すマーケティングということがわかります。次回は、具体的なマーケティング施策について言及したいと思います。 関連記事 まずはこれ! BtoB企業の広報を刷新したい人が最初に手をつけるべき... MacのFinderで最初に表示される場所を設定する方法 【テレワーク】社員たちのリアルな声 Vol.2 Webの壁[担当者に必要な基礎知識/その②]基本構造
企業活動において、コロナ感染の前後で最も大きな影響を受けたのは「営業」部門です。
例えばB2B企業では、新規のお客様との接点を生み出すため、さまざまな活動を行っています。アウトバウンドセールスの代表格である「テレアポ」や「訪問」、一度に多くのリストが得られる「展示会」や「セミナー」など、コロナ前までは、リアルな場での面会を前提とした方法が主流でした。ところが、コロナ感染が拡大すると、状況は一変。リモートワークが広がったため、ターゲットとなる会社に電話しても担当者につながらない。密を避けるため、展示会やセミナーの開催は見送られる。つまり、これまでの方法では、潜在顧客ニーズの収集が難しくなったのです。
これを機に、急激に需要が高まったのが、「ズーム」や「ウェブエックス」、「チームズ」などのウェブ会議システムです。複雑な機能を求めなければ無料で利用することができ、相手のPCにソフトをインストールする必要もないため、利用者数は一気に拡大しました。ウェブ商談、ウェブセミナー(ウェビナー)、さらに最近は、動画を使って商品やサービスを解説するウェブ展示会まで登場しています。
営業活動において、ウェブ商談が主流になったことは、企業にとっても大きなメリットがありました。1点目は生産性の向上、2点目は売上機会の拡大です。
まず、生産性の向上ですが、これまでの商談では客先への移動時間が避けられなかったため、営業が1日に接点を持てる顧客数は限られていました。まして、遠方や海外への出張ともなると移動時間だけでなく、交通費や宿泊費など経済的な負担も小さくありません。ところがウェブ会議システムを使えば、移動時間を考慮する必要がないため、1日に従来の2~4倍ほどの顧客との商談も可能になります。対面よりもウェブ商談のほうが、無駄話もなく短時間で済むため、時間効率も最大化できます。会社にとってフィールドセールスのコストは非常に大きく、最小の人員で多くの顧客を回ることができれば固定費は大幅に削減できるでしょう。
もう一つは、売上機会を拡大できること。これまでは限られた商圏でしかビジネスができなかった業態でも、製品やサービスの質さえ良ければ、売り先を広げることが可能となります。特にリソースの少ない中小・中堅企業にとって、支社や営業所を拡大して人材を新たに雇用するリスクを負うことなく、一気に商圏を拡大できるのは大きな魅力のはずです。
ウェブ商談における課題も
メリットが大きいウェブ商談だが、実は課題もあります。ここでは2点挙げておきます。
一つは、これまで以上に、プレゼンテーションの質が問われることです。対面でもオンラインでも、コミュニケーションや関係性の構築にちがいはありませんが、「素敵なオフィスですね」「最近はめっきり寒くなりましたな」など、オンラインでは他愛もない会話は望まれない傾向があります。そのため、対面では1時間の商談が、オンラインでは30~40分と密度の濃い時間になります。これまでのような、営業マンの人柄や実直さだけでは成約しにくくなった分、ロジカルかつ説得力のあるプレゼンテーションが求められるようになりました。書類や資料を見せながらの説明はできないため、事前にPCやブラウザにデータを表示するなど、万全の準備が必要です。
もう一つは、ウェブ商談では画面しか映らないため、視覚に訴える努力や工夫が必要なこと。「表現力」や「演技力」といってもいいでしょう。身振りや手振り、うなずき、笑顔、発声など、少々大袈裟なリアクションをするくらいでちょうど良く、対面のときと同様、服装や髪型に気を遣うのはもちろんです。また、外部の音を遮るための単一指向性マイクや、逆光や暗い部屋での見映えを向上するリングライトやウェブカメラなども準備したいところ。自宅で仕事をする際は、相手が商談に集中できるよう、バーチャル背景にも配慮しましょう。意外に盲点なのが、PCの角度や画面との距離。やたら顔が大きく見えたり、上から目線で話されたりすると、不快に感じるお客様も少なくなくありません。「第一印象を制する者が、ビジネスを制する」と断言する営業のプロもいるが、あながち間違ってはいないのかもしれません。
広く浸透するインバウンドセールス
さて、ウェブ商談について長々とお伝えしましたが、そもそもお客様が見つからなければ商談には進めません。つまり、これまでと同様、営業における最大の課題は新規顧客の開拓です。コロナ感染の拡大により、テレアポ、展示会、セミナーが機能しなくなったことが影響し、B2B企業ではデジタルを中心としたインバウンドセールスへのシフトが急速に進んでいます。インバウンドセールスとは、営業の側から顧客に声をかけて販売するのではなく、有益な情報を発信することで顧客を惹きつけ、その購買活動を支援することで自社の製品・サービスを購入してもらう手法を指します。簡単にいうと、ウェブサイト上で情報を発信して新規顧客との接点を生み出し、ウェブ商談につなげ、商品を買ってもらうのです。
株式会社ベーシックが運営するオウンドメディア「フェレット」の、B2B企業担当者向けアンケート調査によると、コロナ禍に感じたユーザーの変化として半数近くが「オンラインでの情報収集が増えた」と回答。さらに3割以上が「ウェビナーでの情報収集が増えた」と感じているそうです。一方で、半数以上が「オンラインマーケティングに対する社内のノウハウのなさ」を懸念しています。加えて、B2Cに比べてB2Bのほうが、ウェブサイトによる売上貢献度が高いと指摘する専門家も多く、ますますインターネットを活用したインバウンドセールスに注力する企業が増えることでしょう。
このように見てくると、広義の営業活動において、企業にとっての課題は「川下」のウェブ商談を活用するセールスではなく、「川上」で潜在顧客との接点を生み出すマーケティングということがわかります。
次回は、具体的なマーケティング施策について言及したいと思います。