アドバンド株式会社

アフターコロナの突破口を想像できるか?【生活】

21.01.22
アフターコロナの突破口を想像できるか?【生活】

国内初となる新型コロナウイルスの感染発覚に始まり、いまだ終息が見えない状況で幕を閉じた2020年。医療崩壊を含む日常的な感染リスク、飲食・旅行・エンターテイメント業界を中心とした景気低迷の一方、インターネットを使ったウェブ会議やリモートワークが定着するなど、オンラインでの事業活動が活発になりました。
いま、ニューノーマル(新常態)がDX※を加速させ、あらゆる業界でブレイクスルーが望まれています。2020年をふり返りながら、「生活」「会社」「営業」という3つの観点からコロナ禍の変化をトレースし、2021年以降の事業戦略や、それを可能にするマーケティング手法について考えてみましょう。

※DX…デジタルトランスフォーメーション。ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面で革新させるという概念を指す。

深刻すぎる経済活動の減速


新型コロナウイルス感染症の拡大は社会全体を委縮させ、経済にも深刻な影響を与えました。安倍首相や小池都知事をはじめとする首長、医療関係者ら識者が外出の自粛を呼びかけたことで、特に対面を中心とした集客が必要な業態や、人の移動をともなう企業は大きな打撃を受けました。居酒屋やレストランなどの飲食店、観光やビジネス出張に関わる旅行・宿泊関連企業、航空・鉄道・バスなど運輸産業、フィットネスクラブや鍼灸・マッサージほか密室空間での対応が必要な業態、多くの人が一堂に集まるスポーツ関連施設や冠婚葬祭業、映画・演劇・ライブハウスなどエンターテイメント業界と、幅広い業界へ影響を与えたのです。内閣府が発表した4月から6月までのGDP(国内総生産)の実質伸び率は、年率に換算してマイナス27.8%。リーマンショックを超える落ち込みとなりました。

これを受けて、政府の主導により、各種の経済対策が行われました。1人当たり一律10万円が支給された特別定額給付金。中小企業には最大200万円、個人事業主に最大100万円の現金を給付する持続化給付金や、売上の減少に直面する企業の地代家賃の負担軽減を目的とする家賃支援給付金。飲食店を中心に時短営業に協力する店舗を対象とする、感染拡大防止協力金(自治体により名称は異なる)など、現金支給を中心とする経済支援です。ただし、飲食店など特に影響が深刻な業態では必ずしも十分な金額とはいえず、事業を継続することが困難な状況が続いています。

感染防止と経済活動再開の両立

感染防止と並行して、経済の段階的再開を目的としてスタートした「GoToキャンペーン」は、感染症の第2波・第3波の到来により、批判的な意見も多く、世論の理解を得るにはいたっていません。
「GoToトラベル」は、旅行代金の割引だけでなく、観光施設や土産物店で使えるクーポンが発行されるなど、観光需要を喚起することを目的として7月22日にスタート。政府は利用者や事業者に対し、来館時の検温や浴場・レストランなど人が集まる場所での三密回避の徹底、接触確認アプリの積極的なインストールと、感染防止対策の周知に努めました。
また、「GoToイート」は、ポイント還元やプレミアム付き食事券の発行を支援することで、飲食店への来客を促進し、同時に食材を供給する農林漁業者を支援するキャンペーンです。ネット予約を中心に客数が増えたという飲食店がある一方、「客層が変わったため、再来店が少ない」「仕組みがわかりづらく、お客様からの質問に回答できない」などデメリットを指摘する声も多くあります。さらに、某居酒屋チェーンでは、1品だけ注文し、支払額とポイントの差額を荒稼ぎする「コロナ禍に便乗した錬金術」が物議を醸すなど、制度の不備も指摘されました。「感染が拡大するなか、人の移動や大勢での飲食を勧めるのはいかがなものか」と指摘する医療関係者もあり、感染防止と経済活動再開の両立は、いまだ困難な状況が続いています。

コロナ前後で一変した生活


外出の自粛要請が続くなか、人々の生活スタイルにも大きな変化が見られました。その代表格が、日常的なリスクとの共存と巣ごもり消費です。
一時、ドラッグストアの店頭からマスクやハンドソープ、消毒薬、うがい薬などが消失。なかでも飛沫感染を防ぐためのマスクは、高値で売り抜けようとする業者が乱立するなど、医療機関でさえ手に入れることが困難になったほどです。その後、密閉・密集・密接を指す「三密」を避け、人が集まる場でのソーシャルディスタンスを意識するようになり、店舗や病院など建物の入口での検温やアルコール消毒、外出時のマスク着用、うがいや手洗いの習慣も常態化しました。つまり、リスクが存在することを前提とした生活が、日常になったのです。
また、外出の自粛により家庭で過ごす時間が増えたため、家にいながらの消費が中心になりました。外食をする替わりに、食事を出前する。ウインドーショッピングの替わりに、ネット通販を利用する。遊びに行く替わりに、PCやスマホで観劇や観覧をする。友人との歓談の替わりに、ウェブ飲み会をする。つまり、生活のベースは、オンラインを中心とする巣ごもり消費へと変化したのです。一方で課題も多くあります。一人暮らしの高齢者や人との接点が少ない単身者にとって、日々のコミュニケーションが減ることで不調を訴える人もいます。また、病院・介護施設への面会や故郷への帰省ができない、葬式や結婚式が開催できないなど、行動が制約されるケースが増えると、経済活動の再開にも支障を来すことになります。コロナ前後で一変した生活は、いまだ出口の見えない状況が続いています。


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